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小田原市自治基本条例研究 2 相互の情報発信

小田原市自治基本条例について、第一回は補完性の原理について書きました。今回は「相互の情報発信」について解説と意見を書きます。この条例で評価でき、今後の市民活動に活かしたい部分です。

第14条について、条例文、素案、骨子案を比較してください。

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● 条例文
(まちづくりに必要な情報等の共有及び活用)

第14条 市民及び市は、まちづくりの取組を効果的かつ継続的に進めるため、まちづくりに必要な情報、知識、技能等を適宜、適切な方法により相互に提供し、共有し、及び活用するよう努めるものとする

● 素案

(情報の共有及び活用)
第14条 市民及び市は、まちづくりへの取組を効果的かつ継続的に進めていくため、まちづくりに必要な情報、知識、技能等を適宜、適切な方法により相互に提供し、共有し、及び活用するよう努めるものとする。

● 骨子案

6-1-1:市民、地域活動団体、市民活動団体、議会、行政は、自治の創造、みんなの幸せ、まちが元気になるための情報を、双方向に発信し合い、共有し、活用していきます。

6-1-2:まちづくりに関する情報は、必要な時に、必要とするところに適切に届けられ、必要とする人が容易に取得できるようにすることが必要です。

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素案がほぼそのまま条例になっています。情報共有については、かなりの程度意見を述べた事を覚えています。委員としての思いが、条例に反映されているとの思いを持てた部分です。

情報共有については、小田原市の自治基本条例は画期的であると言えるかもしれません。それは「相互に」という言葉が入っている事です。行政の持っている情報を市民に公開しなくてはいけないと言う条文をもっている自治体はかなりの数になります。市政の情報を市民の要求により公開する、さらに積極的に開示していく事を規定する条項は、今ではかなり普遍的に見受けられます。これらは、行政つまり公から私への情報提供、情報共有についての一方的な規定です。

ところが、「相互に」との一言により、市民から行政、私から公への情報提供も努力規定となっています。まちづくりのためには、市民も行政に対して情報、知識、技能などを提供する努力をしなくてはならないと言うことです。

情報公開の権利は歴史的に市民がすこしずつ獲得して来たものでした。

過去には、公は独占的に情報をもち、民には公の事は知らされないものでした。戦後、情報公開の要求がなされ、徐々に行政の情報公開規定がつくられ、一部の市民が情報公開請求を行うようになりました。

ただ、大部分の市民は公開請求をする事なく、情報の存在も認識していない状況に、さらに積極的開示の規定もつくられ、市政情報センターのようなものも各地に作られました。まだまだ、不十分ですが、公の情報を公開する思想はかなり進展して来たと言えるでしょう。

近年、民の力の向上や情報化社会と呼ばれる時代になり、今や「公」のもつ情報より、民のもつ情報の方が高度な場合が多くなってきました。特に専門家の少ない市町村においては、民のもつ情報や知識の方が圧倒的に高度になっています。

ですので、過去のように行政に対して、情報公開を要求して不備な点を糾弾していくような事だけでは、まちづくりが良い方向に進まない時代になつて来ています。行政の企画力より、民のもつ企画力や行動力が高度になっていくのは時代の趨勢です。このような時代の公と私の関係は、糾弾型、おねだり型から、積極提案型、協働型に進化していくべきです。このような意味で、委員として「双方向性」について繰り返し言及して、それもあって最終的に「相互に」と言う文言が残されたのは大きな成果と思っています。

自分は、委員会で情報公開について、双方向性とともに、繰り返し意見を述べた事として、情報の「リアルタイム性」があります。情報公開も時期が不適切であれば、情報の隠滅と変わらない事になります。開発や大規模公共施設の建設情報などが、設計図も完成した時点で公開されても市民は意見を述べる機会を失ったり、調査費などの大きな無駄を生じます。できるだけ細かく、将来はリアルタイムに情報共有される事により、より効率的にまちづくりが可能になります。

双方向性とリアルタイム性を主張した根底には、SNSを始め、近年の情報システム、社会システムの発展が頭にあります。Facebook などを使えば、数分れべるでリアルタイムかつ双方向の情報共有が可能になります。自治基本条例と並行していた行財政改革検討委員会での議論なども参考にしました。

情報の双方向の共有は、もちろんデジタルの手段だけでなく、市長への手紙や、パブリックコメント、市民委員による委員会、大きく言えば議会制度そのものも双方向性を担ってはいます。ただ、その緻密さや専門性、リアルタイム性には不足する所があります。

条例には「適宜、適切な方法で」と一言ありますが、その背景には、今後相互の情報共有を適切な時期に行う手法を創造していかなくてはいけないとの意味が込められています。「リアルタイム」のような用語は条例文にはそぐわない事から「適宜に」との用語になっていますが、時期を逸した情報公開は条例違反になるのかも知れません。

よく読んで頂ければ、かなり画期的な内容の条文である事が理解して頂けるものと思います。小田原市では、このような方向性の広い意味での情報共有が試みられています。オープンスクェア方式、市民ホール検討委員会での専門委員会と市民委員会との形式、市のfacebook の利用など少しずつ試みが進んでいるものと理解しています。

ただ、制度がつくられ、システムが構成されても、市民の「書込」(相互の発信)がなくては、制度も絵に描いた餅になります。情報の市民からの提供を義務や押しつけと捉えるのではなく、情報公開の流れの中で獲得してきた権利や成果と捉えて、多くの市民が積極的に情報の提供をしたいものです。


骨子案との比較で、条文では不明瞭になった部分があります。


「必要な時に、必要とするところに適切に届けられ、必要とする人が容易に取得できるようにする」との文面ですと、多くの人に明確ですが、条例文では分かりにくいと思います。でも、これらの意味が、縮約されて込められているとの委員会での議論があった事を記憶しています。

骨子案では「市民、地域活動団体、市民活動団体、議会、行政は」と、主語に並べられています。条例では「市民及び市は」となっています。条例の定義項目との精査が必要ですが、少しずれている部分もあります。情報の双方向性、リアルタイムでの共有は、あらゆる立場の間でも推進されるべきものです。もし、抜ける主体があるとすれば、議会基本条例や、諸条例で同様に規定する必要があるかも知れません。

それから、情報共有が「まちづくりを進めるため・・」と限定した形になっています。まちづくりではない市政の部分では、情報共有しなくては良いのか。まちづくりとは何か・・・定義項がないだけに、気になる所です。

相互の情報提供、市民からの情報提供という事で、昔の日本の隣組制度や、旧社会主義国家での密告制度などを思い浮かべる人もいるかも知れません。そのような意味ではない事は、次の条項で「個人情報」について規定してある事と並べて解釈して頂ければ理解して頂けると思います。また、まちづくりと限定した意味もここにあるかも知れません。

近年、小田原市では、市民と行政の協働が少しずつですが、より進みつつあります。市民が市に提供するのは情報だけでなく、知識、技能なども含まれます。市の文化振興のために、自分達の芸術やものづくりの技能などで参加する事も、広くこの項には含まれています。


条例を良く読み込んで頂き、その到達した成果をより発展させるために、より積極的にプラスの価値をもつ情報や知識・技能を市民の側から主体的に発して頂きたいと願っています。この条項に関わった一委員としての意見とお願いです。


 元 自治基本条例検討委員 森谷昭一


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コメント

「情報の共有」は市民自治の、必須条件です。
「ヒルトン」の不動産鑑定書を開示していただきましたが、「収益還元法」による評価部分は、すべての数値が黒塗りで秘匿されています。私企業とはいえ、決算公表の企業ですから、なんとも理解に苦しみます。査定するための基準比率の数字さえ秘匿されているのです。鑑定書をもとに公有財産を処分するという際に、「情報の共有」を拒否するなど、小田原市が率先してこの条文を否定しつづけているのです。審査会に異議申し立てするしかない、こんなことで「協働」など成立するのでしょうか。怒り狂っています。

投稿: smat | 2012年1月11日 (水) 09時01分

仰せの事例は「情報の開示」にあたると思います。情報の「開示」は公が秘匿しがちな情報を市民の要求により公開する事です。情報の「共有」には 民から公への情報提供も含むべき言うのが本文の趣旨です。

開示が進まない理由として、情報開示請求が単なる糾弾に終わる事が多く、創造的なな情報を提供しないで、「今の状況は良くない。より良い事を行政は考えて示せ・・」とだけ言っている場合が少なくないからです。今や知恵は、圧倒的に民が所有している時代です。行政が参考となる資料や知恵を提供していく中で、協働作業でよりよい政策を生んでいく時代になって来たと考えます。

公的な情報を開示するとともに、個の情報は徹底的に保護されるべきです。一般論で言えば、個人商店などの資産評価などは、保護されるべき事案です。公開と保護のバランスは難しい問題です。株式会社についてどうであるかは自分には判断出来ませんが、不明瞭な部分に対して初期段階で行政は慎重であっても構わないと自分は考えます。微妙な部分については審査会と言う制度があり、そこで判断されると言うのは面倒に思えますが、そけほど慎重であっても良いのではないかと思います。あまり安易に公開するのでは民は公を信頼できなくなります。

個人情報の保護の項については、また別途書きたいと思います。

投稿: ブログのあるじ | 2012年1月11日 (水) 21時29分

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