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自治基本条例研究 3 前文

小田原市自治基本条例研究の3回目として、前文をとりあげます。今回も 骨子案、素案、条例を比較する形で問題提起をしたいと思います。

骨子案は、市民による検討委員会の報告として提出されたもので、いわば「市民案」です。法務技術的な所に市民が関わる事はないとの意向で、検討委員会としては「骨子案」という条文になる前の状態で、行政に提出した形です。

それを市の法務担当も含めて担当者が「素案」を作成しました。この後、一回だけ、29回の最終委員会で素案についての説明と検討委員会としての意見を述べる機会がありました。骨子案から素案がつくられた経緯については、骨子→条例案対照資料があります。市民案と行政の案との比較と、違いの理由について記載してある重要な資料です。是非参照ください。

なお、先に3案の比較資料は、今回から最後に掲載する事にします。

1 前文については、オープンスクェアなどを通じても、「分かりやすいもの」「したしみやすいもの」との希望が少なくありませんでした。子供にも暗唱できるようなもの、市役所の職員が毎日仕事前に唱えられもの・・・そんな希望もありました。  北原白秋はじめ、文学の町として、文学的で格調の高いもの、・・そんな意見もありました。骨子案でも、「趣旨が分かりやすく伝わるような、なめらかであまり長くない前文」との記載になっています。

素案や条例の前文をみなさんはどう評価するでしょうか。作文の担当者は不明ですが、骨子案や、検討の過程で出された理想からは、ほど遠い文章です。これを暗唱する人もいないでしょうし、子供達どころか、堅い文章に慣れた大人でさえ分かりにくい文章です。

委員として、「前文は、条文を提示した上で、市民に公募したり、文学的な力のある人の力を借りたりしてはどうか。」と提案した事を覚えていますが、それどころではない・・締め切り間際の間に合わせ原稿ではないかと思えるほどです。骨子案から条例に至るスケジュールが極めて短い事も良い前文が出来なかった一因かも知れません。

前文は、条文と違い、少し冒険のできる部分です。詩人白秋の町らしく、詩の形の前文なんてのができたら、それこそ画期的だと思うのですか。一体、何が言いたいのか、ごく当たり前の事が掲げてあるとの印象しか多くの人に与えないのではないでしょうか。

2 骨私案の説明はに、「これまでの100年」と「これからの100年」の大きな転換・・との一言があります。明治以来の「中央から地方へ」の流れを転換して「地域から世界へ」の流れをつくろうとの意思表明にもなっていますが、この条例前文から、は「地域が主役となる時代」程度しか記述がありません。それだけの言葉から、条例の趣旨を理解してもらう事は、制定までの議論を引用してもらったとしても、無理に違いありません。

3 素案と条例の比較をして頂くと興味深いことがあります。素案では、自治会活動との言葉が明確に入っていましたが、条例では様々な地域活動と曖昧にされています。自治会についての議論はまた別に書きたいと思います。

「持続可能なまちづくり」との言葉も、素案にはありましたが、条例では消えています。「持続可能性」は、国際理念にも通ずる深い意味を与えられた言葉で、知らない人が条例にこの言葉をみつけたら、循環思想にも通ずる意味合いで受け止めたかもしれません。なお、持続可能との言葉は検討委員で、そのような深い意味に通ずるものかとの質問をした事があります。それに対して、それほどの意味づけは考えていないとの事でした。それが骨子案の「幸福感をもって暮らし続けられるまち」と言う言葉になっています。先年までの市政の方針には「持続可能な」との言葉がありましたが、今は「市民の力で未来を拓くまち」となりましたが、国際理念にも通ずる看板を下ろした事は残念です。

4 素案から条例案が作られ議会に送られましたが、素案と条例の違いは15日間のパブリックコメントによるものと言う事になっています。パブリックコメントと、それに対する市の意見は素案への意見とそれに対する市の考え方に詳しく記載されています。
 これを見て頂くと、担当者の意図が良く分かります。かなり詳しい意見に対しては、変更できないとの意見が多いのに較べ、わずかな指摘だけで、前文を変更しています。

素案に対する検討委員の意見を述べる機会は一回だけでした。またパブリックコメントに対して、検討委員が再度意見を述べる機会はありませんでした。最終回以後、特に検討委員と行政のやりとりはなく、条例がつくられていったようです。検討委員が一市民としてパブリックコメントに参加する事もありえたかも知れませんが、提案者側でもあり好ましくないと考え私個人としては意見は出していません。とにかく、最終段階は、スケジュールをこなすためにかなり拙速な制定経過で、委員としては特に前文は不満足なものです。

今までの100年と、これからの100年とは何か。そんな重要な意見交換を、どれほど多くの市民で議論ができたか、反省する事が多いですが、いつか、そんな議論を再度行い、いつかは格調高前文をもった条例に変わっていく事を望みます。

   元自治基本条例検討委員 森谷昭一

・・・資料・・前文・・・・・・・・・・

● 骨子案

前文
0-1:この条例の趣旨が分かりやすく伝わるような、なめらかであまり長くない前文とします。

0-2:地方自治・民主主義の「これまでの100年」と「これからの100年」の大きな転換点にある中で、前例にとらわれることなく、自治の進め方を変えていくことが求められているという時代認識を共有します。

0-3:「小田原市のこれからの100年」を築いていくために、小田原市の様々な自治の担い手は、対話し、信頼し合い、連携し、それぞれの持ち味を発揮していきます。それらの担い手が、小田原市を、より一層幸福感をもって暮らし続けられるまち、小田原ならではの多様性と地域性のあるまちにしていくためのよりどころとして自治基本条例をつくります。

【説明】
この条例には、全ての市民に関わることが書かれます。そのため、最初に目にする前文は、子どもから大人まで誰にでも分かりやすく、読みやすく、趣旨が分かるようなものとします。
0-2:「『これまでの100年』と『これからの100年』の大きな転換」とは、時代を大括りにとらえ、明治維新以降、官が中心に公共を支えていた社会のあり方を、持続可能なまちづくり(幸福感を持って暮らし続けられるまちをつくっていく)のために、市民も主体的に公共を支えていく社会に転換していくという意味です。


● 素案

わたくしたちのまち小田原においては、自治会活動や市民活動等の自発的な活動が
まちを支えるものとして一翼を担ってきた。
地域主権の時代が幕を開け、人や地域の絆を再生し、人と人とが支え合う社会をつくり出すことが求められている今こそ、これまでのまちづくりの取組を生かすとともに、市民一人一人が小田原のまちをつくる担い手として自ら考え、行動することが求められている。
そして、わたくしたちは、持続可能なまちづくりのために、お互いに尊重し、対話し、連携し、協力し合いながら、それぞれの役割を果たさなければならない。
わたくしたちはここに、小田原における自治の基本的な考え方を明らかにし、小田原をより一層生き生きと暮らし続けることができるまちとするために、この条例を制定する。


● 条例

わたくしたちのまち小田原においては、様々な地域活動や市民活動などの自発的な活動がまちを支える一翼を担ってきた。地域が主役となる時代が幕を開けた今、人と人とが支え合う社会をつくり出すためには、これまで以上に市民の力を生かし、人や地域の絆を再生し、これまでのまちづくりの取組を生かしながら、市民一人一人が小田原のまちをつくる担い手として自ら考え、行動することが求められている。そして、市民、議会及び行政といった自治の担い手がお互いに尊重し、対話し、連携し、協力し合いながら、それぞれの役割を果たしていくことが必要である。
わたくしたちはここに、小田原における自治の基本的な考え方を明らかにし、市民がより一層生き生きと暮らし続けることができるまちとするため、この条例を制定する。

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