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地域フォレスター制度

地域森林官制度 フォレスター

日本版フォレスター制度をつくろうとの議論があります。フォレスターは訳せば森林官。林野庁に森林官と言う役職はあり活動していますが、主に国有林の管理が仕事です。ここでは、もう少し包括的に官民協働で森林を統括する立場の創成について提案します。

 森の荒廃が話題になりますが、その原因とひとつとして、森林の所有制度が複雑で、地域の森林管理が一元化できない。国有林、県有林、市町村林、財産区、地域所有、個人林、企業所有・・・様々な所有形態の森が入り乱れているのが普通です。小規模や個人所有林などは、不在地主であったり、相続の関係で、所有者が現地を見た事もないような事例も少なくありません。

 小さな林分を手入れしても、隣の林分がそのままでは、光を林床にいれる事もできません。防災のためにひとつの山全体を一度に手入れする必要な場合もあります。

 森林作業をするのに最初に必要なのは、境界の確定。他人の山を勝手にいじれませんから、作業前に関係者の立ち会いで境界を確定する必要があるのですが、所有者すら忘れている場合があり、困難です。また、老齢のため所有者が立ち会えない等、年々困難になっています。ひどく手入れの遅れた森があり、森林ボランティア団体などが手伝っても良いとの意思をもっていても、所有者すら分からない事が少なくありません。

 なんらからの形で、地域の森林すべてについて、所有者や林分の様子、地質や地形などを統括的に把握している立場が必要です。個人の所有権に関わり、登記簿を参照したりする必要がありますから、ある程度公的な立場、権限をもった行政職の立場が必要です。

 国により制度は違いますが、そのような仕事をするフォレスターと言う役職があります。森林の実情把握だけでなく、技術的な支援や、さらに木材の流通経済のコーディネートまで行う場合もあります。

 公有林だけの立場なら、それぞれのセクションで森林簿をつくり管理していますが、地域横断的に、あらゆる所有形態の森林を統括管理する事はできていません。

 ひとつの水系で、森林はひとつの自然としてのまとまりがあります。所有区分は違っても、生き物達は自由にいきかい、水や風は一緒に動いていいきます。地域、特に市町村レベル、水系レベルなどを統括的に把握して運用していくような営みが森林再生には不可欠です。

 そのような強大な権限を集中的にもたせるのは、自由主義社会になじまない等の意見もあり、公権と私権の関係する難しい問題ですので、そう簡単には進まないでしょう。個人所有者が、かえって反発するような事態もありえます。しかし、制度の確立を待つには、森林の状況はすでに危機的です。

 そんな意味でも、「官民の関わる、協働によるフォレスター制度」を地域ごとに確立する事が課題です。各地域には、地域の名コーディネーターのような立場の人がいて、どこの森は誰の所有か、そしてそれぞれの家庭の実情まで近隣関係の中で把握している方が大抵はおられます。そのような方を通じて、個人的なつきあいの中で、互いの利益なるような施業や保全の手立てを組み立ていいく。さらに、それに行政権限のある立場が協働して、公と私の調整をしたり、資金の融資や補助金などの手当も考えて行く。

ひとりの「森林官」にあたる業務を、行政の森林統括部のようなセクションと民間の森林協議会のような組織、さらに地域森林市民団体連合・・のような連携が加わり、実務として森林統括を進めていく。

上からの統合でなく、下から順次集まりを束ねていき、森林統括を進めていく事が現実的な方法です。こんな形で「地域フォレスター制度」をつくれないでしょうか。地域主義、市民協働、森林再生のさまざまな流れの中で、多分そんな形で森林政策が統合されていくものと考えいますが、森林再生の緊急性からして、このような流れを地域で加速していくのが第一の課題です。

 予算抑制の時代で、公の果たせる役割が相対的に小さくなっていく時代で、官民協働による制度には、森林に関する充分な情報公開も必要です。森林所有なども私権がからむので、公開されない事例も少なくないのですが、公有林については、ある程度の明細な地図がつくられ、市民に公開される事が必要です。森林状況に関する統計や、森林計画なども、もっと市民に公開する事により、協力が得られます。

 市民団体が、どこに関われるか、企業はどのように関われるか、共通の情報共有によって合意形成も容易になります。森の様子が、もっと一般市民に分かるようになれば、おそらくもっと多数の市民が税の使い方や、資金提供、森のの関わりなど、さらに多くの力を集結できるようになるでしょう。積極的な森の情報公開もフォレスター制度の果たす第一の仕事です。

 森林官というと林業的な立場からの統括と捉えがちです。一方で「自然保護官」という制度が「環境省」などにあります。各国にも、保護行政を行う強い力をもった役職がある場合があります。日本では、どうも縦割り行政的に、別々の地域で、別の仕事をするようになりがちです。森林の多面的機能、生産林としての森林だけでなく、国土保全や、生態系維持、動植物の保護など、すべての森に関する人の営みが、さらに統括されていく必要もあります。

 地域フォレスター制度の中には、行政区分や、学問領域の違いなども統合される立場で人材が集結される事も望まれます。動植物の調査活動をするような市民団体と森林ボランティア団体などの市民レベルの包括的な協力関係も大切です。

 このような事は国や県のレベルでは、かなり難しいでしょうが、地域でこれを実現するのは簡単かもしれません。地域という単位では、そのような立場の違いも、「近隣のおつきあい」の中で自然に交流できますから、地域での小さなフォレスター制度は、先見的に可能です。

 異なる森を自由に行き交い、地域の森の「もの知り」になる。今のままでは、森のもの知りは、人間の私権の外にいるクマやイノシシたちだけなのでしょうか。クマやサルほどに森を動き回り、地域の森を統括的に把握する仕事をみんなで進めたいものです。
 
 

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